写真とは何も関係ないが、
児玉清さんが他界された。
今から十数年ほど前のことだが、
仕事で毎週東京に行っていた時期がある。
関西で仕事をしてから、
夜の移動の新幹線でいつも児玉さんをお見かけした。
たぶんクイズ番組の収録帰りだったのだろう。
この方の持ち物が素晴らしかった。
よく使い込まれたヴィトンのバッグ。
長年共にしてきたであろうロレックスの腕時計。
ブランド品であるがまったく嫌みがない。
こんなブランド品でかためていると、
普通成金のようになってしまう。
ところが、その品物の一つ一つを大切に使ってきた時間が、
それらに重厚な雰囲気と渋みを与えていた。
そして、そのよく使い込まれたバッグから、
いつも一冊の本をだしては読んでおられた。
その本も新本ではなく、
何度も読んだであろう本で、
すり切れたブックカバーやページの様子ですぐにそれがわかった。
「紳士」という言葉に値する人がいるとすれば、
児玉さんのような人のことだろう。
芸能界という虚構の世界で、これほど頑固に自分のスタイルを貫ける人は本当に粋だと思った。
心から冥福をお祈りします。