昔から私がデローザが好きなのは、コルナゴのように外見の派手さのない渋みのある美しさがあるからだ。
コルナゴはけばけばしい印象が強い。
ただ、このサローニの深みのある赤は30年を経て、落ち着いた色合いになっている。
元の持ち主は、購入後少し乗っただけで室内に保管していたという。
だから、まるで新車のようにも見える。
この自転車がいかに愛されていたのかがわかる。
でももっと乗ってやった方がよかったのではないだろうか。
床の間の置物では、自転車がかわいそうだ。
自分の好きな自転車を眺めているとき、その目は決して無機物を見る目ではない。
愛しい人を見る目をしているはずだ。
須磨海岸もすっかり夏だ。